大規模修繕工事の中でも重要な防水工事の役割と特徴
大規模修繕工事の中でも重要な防水工事の役割と特徴

今回は、大規模修繕工事の中でも重要な防水工事について、
なぜ防水工事が重要なのか、どのような箇所で実施されるのか、さらに主要な防水工事の種類や特徴について分かりやすく解説します。
目次
① 建物修繕において防水工事が重要な理由
② 国の調査では大規模修繕工事金額の3割以上が防水工事
③ 大規模修繕工事で防水工事を実施する箇所
④ 屋上防水の3大工法
⑤ 防水工事は専門家への相談がおススメ
⑥ まとめ
① 建物修繕において防水工事が重要な理由
建物にとって防水工事は非常に重要です。
その理由は、防水層を設けることで雨水の侵入を防ぎ、建物を長く健全な状態に保つことができるからです。
新築時には十分な機能を有する防水層も、経年劣化にひび割れや破断などの不具合が生じ、防水機能が徐々に失われていきます。
防水層の劣化を放置すると、隙間から建物内部に雨水が侵入し、鉄筋や鉄骨などの構造材を腐食させ構造材の強度の低下を招きます。
さらに、雨漏りによる生活への影響や資産価値の低下など、さまざまな問題につながる可能性があります。
〈漏水によるトラブルの例〉
鉄筋爆裂

建物内に雨水が侵入することで鉄筋が錆び、腐食膨張して周辺のコンクリートを押し出してしまう劣化現象。
放置すると建物の耐久性や耐震性が著しく低下する恐れがあります。資産価値を下げる原因にも。
雨漏り

防水機能の劣化により、建物内部に雨水が侵入する現象。
内装の汚損やカビの発生で生活に影響がでたり、健康被害に繋がるケースも。
大規模修繕工事における防水工事は、劣化した防水層を塗り替えたり、シートの張り替えをおこなったりすることで、建物の防水機能を回復させ再び健全な状態に戻す重要な役割を持っています。
② 国の調査では大規模修繕工事金額の3割以上が防水工事
国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、防水工事(屋根防水・床防水)は大規模修繕工事金額の中でも割合が高く、3割以上を占めています。

※国土交通省「令和3年 マンション大規模修繕工事に関する実態調査」を元に作成
防水工事の一種であるシーリング工事(建具廻り目地や外壁目地などにゴム状の止水材を打ち込み雨水の侵入を防ぐ工事)まで含めると、その割合は工事金額の4割以上にもなります。
こうした調査結果からも、防水工事が大規模修繕工事に大きく関与する大事な工事であることが分かります。
③ 大規模修繕工事で防水工事を実施する箇所
大規模修繕工事では、屋上、バルコニー、廊下など建物の様々な箇所で防水工事が行われます。
ここでは防水工事が実施される代表的な施工箇所を紹介します。(シーリング工事は除く)
〈 屋上 〉
傾斜のない平らな屋根(陸屋根)。防水層を塗り替えたりシートを張り替えたりする工事を行います。

ウレタン塗膜防水が施工された屋上

アスファルト防水(露出仕上げ)が施工された屋上
〈 屋根 〉
傾斜のある勾配屋根。塗装をしたり、屋根材を葺き替えたりする工事を行います。

アスファルトシングル葺屋根

金属屋根
〈 ルーフバルコニー 〉
階下(居室)の屋上部分を利用したバルコニー。防水層を塗り替えたりシートを張り替えたりする工事を行います。

ウレタン塗膜防水が施工されたルーフバルコニー

アスファルト防水(保護コンクリート仕上げ/押さえコンクリート仕上げ)が施工されたルーフバルコニー
〈 バルコニー ・ ベランダ 〉
建物の外側に取り付けられた手すり付きの室外スペースの床。防水層を塗り替えたりシートを張り替えたりする工事を行います。

長尺塩ビシートが施工されたバルコニー

ウレタン塗膜防水が施工されたバルコニー
〈 共用廊下床 〉
共用廊下の床部分。防水層を塗り替えたりシートを張り替えたりする工事を行います。

長尺塩ビシートが施工された共用廊下床

ウレタン塗膜防水が施工された共用廊下床
〈 共用階段 〉
共用階段や階段踊り場。防水層を塗り替えたりシートを張り替えたりする工事を行います。

長尺塩ビシートが施工された共用階段

ウレタン塗膜防水が施工された共用階段
④ 屋上防水の3大工法
一般社団法人 日本防水材料協会の統計調査(2024年)によれば、現在最も使用されている防水工法はシェアの大きい順から「ウレタン塗膜防水」、「合成高分子系シート防水」、「アスファルト防水(熱工法・常温工法・トーチ工法)」とされ、これら3つの防水工法は、マンション大規模修繕工事の屋上防水で最も選定されることが多い工法です。
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※JWMA一般社団法人日本防水材料協会 2024年施工実績数データを元にグラフ作成
今回は防水工法の中でも代表的な「ウレタン塗膜防水」「合成高分子系シート防水」「アスファルト防水」の特徴について解説したいと思います。
1.ウレタン塗膜防水

写真はウレタン塗膜防水の密着工法
ウレタン塗膜防水とは
ウレタン塗膜防水とは、ウレタン樹脂を主原料とする液状の防水材を塗布することによって、継ぎ目のないシームレスな防水層を形成する工法です。
ウレタン塗膜防水の中でも、密着工法、メッシュ工法、通気緩衝工法、超速硬化ウレタン吹付工法などの種類があります。
密着工法
既存の下地の上に直接ウレタン防水材を流し込む工法
メッシュ工法
密着工法の一種で、ウレタン防水の1層目にメッシュシートを設置しウレタン防水層の厚みを確保する工法
通気緩衝工法
既存下地の上に通気緩衝シートを敷いてからウレタン防水材を流し込む工法
下地と防水層の間に通気緩衝シートを設置することで、下地から発生する水分(水蒸気)を通気緩衝シートを通じ脱気筒から逃がし、防水層のふくれや剥がれを防ぐことができます。通気緩衝シートと脱気筒はセットで設置されます。
下地に水分を多く含むロケーションで採用されます。
超速硬化ウレタン吹付工法
硬化する速度が非常に速い特性を持つウレタン防水材を専用の機材で吹き付けて塗布する工法
一般的なウレタン防水と比較し非常に強度が高いため、屋上駐車場や競技場スタンドなどにも利用されます。
各工法の詳細は以下の現場レポートでもご紹介しています。
よろしければこちらもご参照ください😊
【現場レポ】ウレタン防水~密着工法~(2023.10.25)
【現場レポ】ウレタン防水~通気緩衝工法~(2022.4.26)
【現場レポ】防水工事~ 超速硬化ウレタン吹付システム 『リムスプレー』~(2023.2.24)
ウレタン塗膜防水のメリット・デメリット
ウレタン塗膜防水の最大のメリットは、液状のウレタンを塗布するため複雑な形状にも施工がしやすい点です。
軽量で建物への負担が少ないため建物の修繕改修工事でよく利用される防水工法の一つです。
合成高分子系シート防水やアスファルト防水と比べると安価なため、コスト面でのメリットもあります。
デメリットとしては、その場で防水材を塗り広げて防水層を形成するため、職人の技量によって防水層の膜厚にばらつきがが出る可能性がある点や、硬化・養生に時間を要するため天候の影響を受けやすい点が挙げられます。
2.合成高分子系シート防水

写真は塩ビシート防水の機械的固定工法
合成高分子系シート防水とは
合成高分子系シート防水とは、塩ビや合成ゴム等でできた防水シートを張り合わせて敷設し防水層を形成する工法です。
シートには塩ビ系、ゴム系など種類がありますが、屋上防水においては耐候性の高い塩ビ系防水シートの利用が一般的です。広く平らな屋上の施工に向いています。
合成高分子系シート防水の中にも、接着剤でシートを固定する接着工法、専用のディスクやアンカー(固定器具)を使って機械的にシートを固定する機械的固定工法があります。
合成高分子系シート防水のメリット・デメリット
合成高分子系シート防水のメリットは、工場製品のシートを使用するため品質が安定していることや、シートが高い耐久性・耐候性を有しているという点です。
デメリットとしては、シート状のため複雑な形状には不向きなこと、また、建物の修繕改修工事においては塩ビ系シートを用いた機械的固定工法を採用する場合が多く、施工時にアンカーを固定するために屋上にドリルで穴をあける大きな音が発生する点です。
原則、非歩行のため、ルーフバルコニーなど日常的に人の歩行がある場所にも向きません。
3.アスファルト防水

写真は改質アスファルトシート防水の常温粘着工法
アスファルト防水とは
アスファルト防水とは、アスファルトと(ルーフィング)シートで防水層を形成する防水工法です。
新築のマンションやビルの屋上防水で最も利用されている防水工法の一つで、アスファルト防水の中にも、熱工法、トーチ工法、常温粘着工法(冷工法)といった種類があります。
最も伝統的な工法が「熱工法」で、溶融窯でアスファルトを溶かし、溶かした液状のアスファルトを流し込みながらルーフィングシートを積み重ねて防水層を形成する工法です。
熱工法は溶融窯を利用するため、準備の手間や作業工程が多く、またアスファルトを溶かす工程でニオイが発生するため、それらのデメリットをカバーする新たな工法が現れました。
それが「改質アスファルトシート防水」です。
改質アスファルトシート防水とは、高性能アスファルトを含浸させたシートを張り付けて防水層を形成する工法です。
トーチ工法や常温粘着工法(冷工法)も改質アスファルトシート防水の一種です。
現在はアスファルト防水といえば、改質アスファルトシート防水が主流となっています。
また、防水層の表面の仕上げ方にも種類があり、表面を保護塗料で仕上げる露出仕上げ、表面の上に薄いコンクリートを流し固めて仕上げる保護コンクリート仕上げ(押さえコンクリート仕上げ)といったものがあります。
改質アスファルト防水 常温粘着工法の詳細は以下現場レポートでもご紹介しています。
よろしければこちらもご参照ください😊
【現場レポ】アスファルト防水~改質アスファルトシート防水・常温粘着工法~(2025.11.25)
アスファルト防水のメリット・デメリット
アスファルト防水のメリットは、最も歴史ある防水工法であるという点です。
現在も、新築のマンションやビルの屋上防水はアスファルト防水が広く採用されており、アスファルト防水には高い防水性・耐久性を有する実績と信頼があります。
デメリットとしては、熱工法の場合はニオイが発生すること、改質アスファルトシートの場合はシート状のため複雑な形状に不向きなこと。また、アスファルト防水は他の防水工法と比較し重量があるため、カバー工法(既存の防水層の上から新しい防水層を重ねて設置する工法)による修繕改修の場合、回数の制限が生じたり、次回改修時に撤去が必要になる(撤去費用がかかる)といった点があります。
⑤防水工事は専門家への相談がおススメ
防水工事は大規模修繕工事の中でも機能面やコスト面において非常に重要な工事ですが、建物の構造や施工部位、既存防水層の種類、劣化状況などを総合的に判断する必要があります。
防水工事を検討する際は、豊富な経験や知識、施工技術を有する専門家へ相談することをおススメします。
⑥ まとめ
・防水は建物内部への雨水の浸水を防ぎ、建物を健全な状態に保つ重要な役割を担う
・大規模修繕工事において防水工事は工事金額の約3割を占める重要な工種
・防水工事は屋上、屋根、ルーフバルコニー、共用廊下床などさまざまな箇所で実施される
・屋上防水の代表的な種類は「ウレタン塗膜防水」「合成分子系シート防水」「アスファルト防水」
・最適な防水工法は建物ごとの条件によって異なるため、専門家への相談が重要
以上
本記事では、大規模修繕工事における防水工事の重要性や施工箇所、防水工法の特徴について解説しました。
修繕改修の防水工事において「この防水工法を選べば絶対に正解」というものはありません。
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その他の防水工法のご紹介
屋上防水以外の防水工法についても現場レポートにてご紹介しています。
【現場レポ】アクリルゴム系外壁塗膜防水・アロンウオールNEO工法【防水工事・斜壁】(2025.11.4)
【現場レポ】透明塗膜防水S-T工法(セブンS)【防水工事・斜壁タイル】(2025.5.12)
【現場レポ】アスファルトシングル ペイントリフレッシュ工法【防水】(2022.07.05)
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