【現場レポ】下地補修工事(タイル補修)~プレスダウングラウト工法~
下地補修工事(タイル補修)~プレスダウングラウト工法~
こんにちは😄
今回は東京都多摩市のマンションで下地補修工事の一種である「タイル補修」の様子を撮影することができました。現場レポートとしてお届けしたいと思います。
下地補修工事(タイル補修・モルタル浮き補修)の様子は過去にも現場レポートとしてご紹介をしています。
よろしければこちらもご覧ください😊
【現場レポ】下地補修工事(タイル補修)~MUSドッグキャップ工法~(2022.11.1)
【現場レポ】下地補修工事(タイル補修)~エポキシ樹脂注入ピンニング工法~✨(2022.2.28)
【現場レポ】下地補修工事(モルタル浮き補修)~エポキシ樹脂注入ピンニング工法~(2023.11.14)
下地補修工事ってどんなことをするの?
下地補修工事とは建物の外壁を補修したり、防水工事や塗装工事の前に下地(素地)を補修する工事のこと。
「下地躯体補修工事」、「躯体補修工事」と呼ばれたりもします。
具体的には、コンクリートやモルタル面のひび割れや欠損の補修、タイルのひび割れや浮き補修などがあります。
今回の現場ではタイル浮き補修工事を行いました。
タイルが浮いているってどんな状況?
新築時、タイルはこのように建物にしっかり貼り付けられています。
しかし、長い時間が経過すると、温度差による膨張収縮や、吸水・乾燥による膨張収縮が繰り返され、次第にモルタルの付着力が低下し、タイルに浮きが生じてきます。
また、こうした経年劣化の他にも、地震などの激しい揺れによって建物にひずみが生じてタイルが浮いてしまったり、施工不良によって浮きの症状が発生してしまうこともあります。
タイル浮きには種類がある
タイル浮きは主に「タイル陶片浮き」「下地モルタル浮き」の2種類に分けることができます。
タイル陶片浮き
タイル陶片浮きは、タイルがタイル貼り付けモルタルから浮いている状態。
上のイメージ図ではタイル全体が張り付けモルタルから浮いてしまっていますが、実際にはタイルの一部分が剥がれて浮いてしまっていることが多いです。陶片浮きの場合、貼り替え補修が一般的に用いられます。
下地モルタル浮き
下地モルタル浮きは下地モルタルがコンクリートから浮いている状態。
下地モルタル浮きの場合、目地から穴をあけ、下地モルタルとコンクリートの隙間部分に樹脂を注入しアンカーピンで固定する補修方法が一般的です。
今回はタイル浮き補修の施工方法として、プレスダウングラウト工法を採用しました。
プレスダウングラウト工法とは
プレスダウングラウト工法とは、アルミ製のフレーム(PDフレーム)を外壁に取り付け、壁面にタイルを押し付けながら樹脂接着剤を注入してPDピンで固定する工法です。
タイルを押さえつけながら樹脂接着剤を注入するため、タイルの押しあげ(はらみ)や圧力によるタイルのひび割れを防ぎながら、樹脂接着剤を浮き部全体に拡げることができます。
注入材(樹脂接着剤)による固定とPDピンによる機械的固定力でアンカー効果が高く、万が一のタイル剥落の事故に備え、PL保険(最大10年)が付帯しているのもこの工法の特徴です。アサヒボンド工業会会員専用の工法となっています。
●プレスダウングラウト工法のメリット
・PL保険付きで安心(最大10年保証)
・タイルを躯体に固定するアンカー効果が高い(樹脂接着剤+PDピン)
・タイルを張り替える工法に比べ、斫る音(騒音)・粉塵が少ない
・タイルを張り替えないため美観を維持できる(タイルの色が変わらない)
・タイルを張り替えないためゴミが出ず、環境負荷が少ない(タイルを張り替える工法では撤去したタイルがゴミになる。)
・工事を早く実施できる(特注タイルによるタイル張り替えと比較し、工事までの準備期間が短く済みます。特注タイルとは既存のタイル色に合わせて制作する特注のタイルのこと。制作には3か月程の期間が必要となる。)
使用する部材
PDフレーム
プレスダウングラウト工法専用のアルミ製フレーム
弾性G(弾性接着剤)
エポキシ樹脂の接着力と弾性接着剤の柔らかさを持つ弾性接着剤。注入用エポキシ樹脂とタイル張り用弾性接着剤の2つのJIS規格数値をクリアしています。使用する時は主剤と硬化剤を混ぜて使用します。
ちなみに弾性Gはエポキシ樹脂と比べ作業後の清掃(目地からはみ出た注入材を取り除く)作業が容易で、変性シリコンのように硬化後に簡単に取り除くことが可能です。
※エポキシ樹脂は硬化前に拭き取り除去をするが、拭くとエポキシ樹脂が表層にクリアの膜のように残ってしまうことがある。表層に残ったエポキシ樹脂は黄変することもある。また、固まってしまった場合は削り取る作業が必要なため手間がかかる。
PDプラグ・PDアンカー
PDフレームを固定するための、プラグとアンカー
PDピン
コンクリートビスとして躯体に機械的固定力を有します。樹脂接着剤の注入後にPDピンを締結します。
◎アンカーピンとの違いについて
タイル浮きの補修工法として一般的な「エポキシ樹脂注入ピンニング工法」では以下写真のようなアンカーピンを使用します。アンカーピンの先端は平らで、躯体に直接固定することはできません(あくまでも引っ掛かり棒としての役割)。
プレスダウングラウト工法の施工の流れ
①注入箇所のマーキング
打診棒を使ってタイルが浮いている箇所を確認し、浮き部(補修範囲)をテープで、樹脂接着剤の注入箇所をチョークでマーキングします。
青と黄色の養生テープで囲われているのが浮き範囲です。
②穴あけ(PDフレーム取り付け用)
PDフレームの取り付け位置を確認し、穿孔ドリルで穴をあけていきます。
穴を清掃をし、汚れを取り除きます。
③PDプラグ・アンカーの設置
フレームを固定するためのPDプラグを差し込みます。
PDアンカーを差し込みます。
④PDフレームの取り付け
フレームをひっかけ、アンカーを締めてフレームを固定します。
全てのフレームを固定します。
⑤穴あけ(樹脂接着剤注入用)
樹脂接着剤を注入する箇所に穴をあけます。
⑥ウェスパッキンの挿入
樹脂が戻らないように、あらかじめ穴にウェスパッキンを挿し込みます。
⑦樹脂接着剤の注入
打診棒で確認しながら注入作業をします。
打診音を確認し、注入が足りない時は、注入を繰り返します。
⑧PDピンの挿入・締結
PDピンを挿入します。
挿入したPDピンを全て締結します。
⑨PDフレームの取り外し
アンカーを緩め、PDフレームを取り外します。
樹脂接着剤の充填を確認後、PDアンカーを取り外します。
※樹脂接着剤が固まった後に、打診検査を実施し、浮き箇所があれば追い注入を行います。
⑩仕上げ
最後に目地穴を埋め戻し、クリーニングをしたら完了です。
打診音でタイル浮き補修の効果を確認
タイル浮き部を補修する前と後で打診音が変わる様子を撮影しました。
ぜひ、音の違いを聞き比べてみてください。
以上
今回は下地補修工事(タイル補修)のプレスダウングラウト工法の様子をお届けしました。
最後までご覧いただきありがとうございました🙇♀️
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
「他の現場レポートも見てみたい」、「大規模修繕に関する基礎知識をもっと知りたい」、「実際どのぐらいの費用がかかるのか知りたい」という方は、こちらのページもぜひ参考にしてみて下さいね😊💻✨
▶現場レポート